子どもの平均寿命は、どこで生まれるかによって大きく異なります。日本やスウェーデンでは80 歳を超え、ブラジルなら72 歳、インドでは 63歳。一方、アフリカの国々では 50 歳にも満たないのです。国の貧富の程度にかかわらず、全ての国において、健康と病は社会階層の勾配に従っていることもわかってきました。 すなわち、社会経済的地位が低いほど、健康状態も悪いのです。
こういった背景を踏まえ、2008年には、WHOに健康格差への政策の提言および手法を提供しました。
WHOの「健康の社会的決定要因に関する委員会」による2008年のレポートで、格差を放置すべきではないという立場から3つの勧告が行われました。
1つ目は、行動は生活環境により規定されるため、生活習慣よりも生活環境の方が大事だという点。それまでは生活習慣に着目し、「歩いた方が健康にいいから歩きましょう」といった健康教育が促進されてきました。しかし、知識としてそれを知っていても、行動に移し、継続することは難しいもの。従って、生活の中で歩く環境をつくるべきだという勧告です。
2つ目は、社会経済的な格差にも目を向け、社会保障の機能を強化し、平等にしていこうという勧告。
3つ目は、さまざまな取り組みを行った上で、それらのインパクトや効果を評価し、効果があるものを世界中に広めていくべきだというものです。
翌2009年のWHOの総会で、これらの勧告が、世界中の加盟諸国および専門職は、健康格差の縮小のために取り組むべきだという決議へとつながったのです。