SPECIAL TALK

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SDGs達成に向けた
日本福祉大学の取り組み

SDGs達成に向けて、地域に根ざし、世界を目ざす「ふくしの総合大学」である日本福祉大学はどのような教育や取り組みを行うべきか。この重大なテーマについて、国立長寿医療研究センター名誉総長であり日本福祉大学常務理事を務める大島氏、日本福祉大学の児玉学長、福田副学長の3名にお話いただきました。

大島 伸一

大島 伸一 日本福祉大学 常務理事
国立長寿医療研究センター名誉総長

1970年、名古屋大学医学部卒業。社会保険中京病院で腎移植等、泌尿器科医として勤務。1992年に副院長に就任。その後、名古屋大学医学部泌尿器科学講座教授、名古屋大学医学部附属病院病院長を経て、2004年、国立長寿医療センター総長に。現在は名古屋大学名誉教授、国立研究開発法人国立長寿医療研究センター名誉総長を務める。

児玉 善郎

児玉 善郎 日本福祉大学 学長

1985年、神戸大学大学院工学研究科環境計画学専攻修了。博士(工学)。民間の都市計画事務所・株式会社計画技術研究所研究員、神戸大学工学部技官、産業技術短期大学助教授を経て、2000年に日本福祉大学社会福祉学部に赴任。大学院社会福祉学研究科長、社会福祉学部長補佐、社会福祉学部長、執行役員(高大接続)を経て、2017年より学長を務める。

福田 秀志

福田 秀志 日本福祉大学 副学長

1992年、名古屋大学農学部林学科卒業。1997年、名古屋大学大学院生命農学研究科林学専攻修了 博士(農学)。1996年から1999年まで日本学術振興会特別研究員。2003年、日本林学会賞受賞。2008年より日本福祉大学健康科学部福祉工学科バリアフリーデザイン専攻長、2011年より健康科学部福祉工学科長、2013年より健康科学部長、2017年より副学長を務める。

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17の国際目標と、
本学の理念の合致が大前提。

福田日本福祉大学の創立以来、60年以上にわたって実践してきた教育・研究の多くがSDGsの17の目標そのものだと感じますが、児玉学長はSDGs推進のために本学が取り組むべきことをどのようにお考えですか。

児玉本学園の創立者である鈴木修学先生が、建学の精神で「困難を抱えている人たちのしあわせの実現」を掲げており、そのために行動できる人の社会への輩出が本学の使命です。つまりSDGsが掲げる「誰一人として取り残さない」と理念が合致し、これまでの取り組み自体がSDGsの考え方にフィットしている。これが前提として大きいですよね。そのうえで、たとえばゴール1「貧困をなくそう」、ゴール3「すべての人に健康と福祉を」、ゴール4「質の高い教育をみんなに」は、今まさに推進している地域共生社会に向けての教育や研究内容と重なっています。

福田そうですね。学長がおっしゃったようにゴール1、ゴール3、ゴール4は本学として重視して取り組むべき目標だと思います。同時に、17のゴールは密接に関連し合う不可分性を持ちますから、広い視野を持って教育・研究の実践を進めるべきでしょう。本学は社会福祉学部をはじめ、教育・心理学部、健康科学部、経済学部、国際福祉開発学部、看護学部、スポーツ科学部、通信課程の福祉経営学部と8学部のさまざまな分野からアプローチできるのが特徴。学部の枠を越えて、横断的に学べる仕組みも強化しながら幅広い視野でSDGsに関われると思います。大島先生は、本学の取り組みを医療の立場でどうご覧になりますか。

大島日本福祉大学の取り組みすべてが人のしあわせにつながっているのは素敵です。SDGsが国連に採択されたのは2015年ですが、「サステイナブル・ディベロップメント」は1990年代からのグローバルな課題であり、中でも環境問題は重要なテーマでした。現在、世界規模では人口爆発が問題になっていますが、日本では人口減少、少子高齢化が問題です。それによって社会構造が一変しつつあり、私たちの暮らしを脅かす深刻な課題が山積しています。1950年には全体の7%だった高齢者人口が、今や30%を超え、医療制度、介護保険制度、年金制度などの社会保障は先行き不安です。その中で、大学への期待や大学が果たす役割は一層大きくなっていると思います。

児玉日本の人口が1億人を切ったとしても、コマのような形の人口ピラミッド構成では不安定で仕方ないですよね。将来、75歳以上、80歳以上をどう支えていくのかを社会的に考えていかなければならない。日本が世界の先陣を切って進めるべき課題です。

国連アカデミック・インパクト加盟証

国連アカデミック・インパクト加盟証

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課題に向き合い、
情報共有しながら解決を。

大島こうした問題について、私は理系よりもむしろ文系の大学が中心となって引っ張っていくべきではないかと感じています。ですから日本福祉大学には一つひとつの課題に正面から向き合い、取り組み、情報共有しながら目標に向かってほしいと願っています。それにSDGsは現代社会の諸問題を理解し、普遍的な倫理観を育むきっかけとなるため、教育機関が取り組む重要性は大きい。SDGsのゴール達成に貢献するのはもちろんですが、学生自身が自らの成長につながるような学びができるようにしていただきたいと思いますね。

福田大島先生に指摘いただいた情報共有の面では、本学のこれまでの取り組みが必ずしも社会に発信できていない点から、2019年9月に「国連アカデミック・インパクト(UNAcademicImpact)」に登録しました。これは大学の社会貢献、社会の発展に寄与するための活動と、国連のめざす社会変革の活動を連携させることを目的としたプログラムで、国連の定めた10原則を積極的にサポートする活動が求められています。アカデミック・インパクト参画を契機に、SDGsを基軸とした国連と連携した教育、研究、国際貢献を積極的に展開していきます。

児玉国連アカデミック・インパクトや大学インパクトランキングを通して、“しあわせ”の多様性を伝えたいと思います。良い大学を卒業し、優良企業に勤めて高収入を得て、多くの年金をもらって生活する従来の理想と言われるライフコースだけでなく、収入は高くなくても、誰かの支えになる仕事を選択したり、やりがいを感じながら地域の方々のしあわせに貢献したり。現代のしあわせ像は決して一つではありません。多様なしあわせを認め合う大切さを、本学の取り組みの中から発信していくことが重要です。

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ふくしの大学ならではの視点で
社会に活動を発信。

福田ふくしの総合大学ならではの視点で活動を社会に発信しながら、本学の貢献を社会にアピールできる機会だと思います。

児玉国立研究開発法人科学技術振興機構社会技術研究開発センター(RISTEX)が募集する2019年度戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム(シナリオ創出フェーズ)において、本学看護学部の長江美代子教授が研究代表となっている提案が採択されましたが、これも一つの例です。

福田そうですね。このプログラムには全国の国公私立大学や国立研究開発法人などから134件の応募があり、このうち10件が採択されました。採択率はわずか7.4%。テーマは「性暴力撲滅に向けた早期介入とPTSD予防のための人材育成と社会システムづくり」です。まずは愛知県内で性暴力被害者支援のワンストップの支援モデル事業をつくり、被害者の救援、治療、回復などの仕組みを構築。いずれは社会システムまで発展させたいと進めているところです。

大島採択率が7.4%とは、非常に狭き門ですね。ふくしの総合大学というところに注目され、貢献が期待されて採択につながったのではないでしょうか。SDGsのゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」に当てはまる取り組みとして、私も興味深く拝見しています。日本福祉大学として、今後さらに発展させていきたいとお考えの部分はどのあたりですか。

児玉大学としては、SDGsに資する研究に取り組むとともに、教育を通じてSDGsの達成を担う人を社会に輩出することを重視しています。学生たちが本学の学びを通じて身に付けた力を2030年までの達成をめざすSDGsのゴールに向かって、役割を担ってほしいと思っています。そういう意味では、本学のふくし・マイスター養成の取り組みは、このねらいに合致しています。地域連携教育を通じた、地域で暮らす人やコミュニティが抱える課題の解決に取り組む実践的な学びが、社会に出てからも自らアクションを起こすことにつながると思います。本学から毎年、通学過程で1,500人以上の卒業生が社会に出て行きます。卒業生各々が、暮らしている地域や職場のある地域において、志を持って自発的な活動をしてくれることが、「誰一人として取り残さない」社会の実現につながっていくでしょう。

福田研究プロジェクトとしては、現在、公益財団法人日本生命財団と行っている知多半島をモデルとした0歳~100歳までのすべての人が安心して暮らせる地域づくりをめざした地域包括支援体制構築の共同研究も進めています。今後、さらに発展させていきたいところです。

児玉この研究は、一人暮らし高齢者や障がいのある人をはじめ、乳幼児や子どもから成人まですべての人が地域で安心して暮らすための支援体制の構築をめざしており、SDGsにフィットしています。本学の多様な学部の教員が地域の自治体や事業者、NPOの方たちと協働して取り組んでおり、本学の特長を活かす中心的な研究と位置づけて推進していきたいと考えています。

大島高齢社会の中で医療福祉問題というのは、人間の生命、生活に直結する問題です。これまで医学というのは生命偏重で、生活という側面を考えていませんでした。ところが、高齢社会での医療は“治す医療”から“治し支える医療”へと変わり、生命だけではなく生活までを考えることが明確に打ち出されています。先ほど申し上げたように、「ふくし」という冠を持つ大学として、そういった仕組みづくりで中心的役割を担ってくれるよう大いに期待しています。総合的にマネジメントしていけるような、そんな役割を求められていると思います。

福田大島先生にそう言っていただけると一層身が引き締まる思いです。医療政策も含め、成熟した新たなしあわせを考える上で日本福祉大学の役割は非常に大きいと感じました。SDGsのゴールは2030年。目標の達成に向けて一丸となって邁進するとともに、大学としてもさらなる飛躍をしていきたいと思います。

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