実行事例

2021.02.19

「国籍」も「年齢」も超えてつながる
居心地良い団地コミュニティへの挑戦
みんながついつい集まる仕掛けとは?

GOAL

GOAL

10.2

TARGET

2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。

GOAL

GOAL

11.3

TARGET

2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、すべての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。

GOAL

GOAL

11.7

TARGET

2030年までに、女性・子ども、高齢者および障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。

GOAL

GOAL

17.17

TARGET

さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。

協働機関:日本福祉大学、知多市、UR都市機構

01

ライフスタイルは、人それぞれの時代へ。
既存コミュニティでは限界も…。

人口減少や少子高齢化の進展、家族形態の多様化、多国籍住民の増加等、社会が大きく変化しており、暮らしの環境も多様化しています。人々の暮らし方や働き方等のライフスタイルも変化し、移住場所に求めるニーズも多様化してきています。社会的孤立や世帯の重層的複合的な課題も指摘されている中で、自治会等既存の地縁型コミュニティは活動維持の困難さや課題解決力の低下といった疲弊をみせています。
 一方、高度経済成長期後半に建設・入居がなされた公的集合住宅団地は、一つの居住形態でした。しかし、建設から50年前後が経ち、建物・設備事態の老朽化、居住者の高齢・多国籍化、空き家・空き店舗の増加、管理運営システムの困難性、団地コミュニティにおける組織としての機能不全等に直面しており、多元的・広域的側面から包括的に集合住宅団地での住まいや暮らしのあり方を捉え直す必要性がでてきました。モデル的な家族像や同質的な人々を前提とした時代のコミュニティから、多種多様な家族形態やライフスタイル、また異なる文化的背景や価値観といった「多様性」や異質性を包摂するコミュニティへの転換が必要です。
 ここでは、愛知県知多市UR 朝倉団地及びその周辺をフィールドとして、多世代・多文化共生に向けた団地コミュニティのあり方を探求するためにアクションリサーチを通じて、これからの取り組み方策を検討しました。
実行事例

02

まずは、多様なお互いを知ることから。
自然と会話し、役割がもてるコミュニティ
を引き出す。

朝倉団地を含むつつじが丘地区(コミュニティ)の人口は 6,942人、世帯数は 3,334世帯、高齢化率は 32.8%(2019年 4 月 1日現在)となっており、高齢世帯率、独居世帯率も高い。団地内商店街の空き店舗も増加しています。
 0歳から100歳まで、外国にルーツを持つ人などを含めた多様な人々が交じり合い、関係性を育み、時には、協働や連携しながら活動し、暮らしやコミュニティをより良いものにしていく必要があります。集合住宅団地を課題先進地域と捉え、住まいや暮らし方の観点から、「地域共生社会」の実現に向けてどのようなことができるのかといった実践活動を行いました。
 対話や交流の場づくりから始め、コミュニティプレイスづくりを基盤にした取り組みを進めてきました。対話や交流の場を重視し、取り組みのプロセスを大事にしていくことで、多様な人々が緩やかに交じり合い、また、想いを紡ぎ、やわらかくビジョンを共有しながら、それぞれができる役割を創出していくことができてきました。様々な人の出番を増やしながら、担い手を育んでいくこと、また、それぞれの関心や得意技を引き出しながら、力を発揮していくことにもつながってきます。
実行事例

03

「私たち」の居場所づくりは、
「私たち」だから、できる。

次に、大学、市役所、UR 都市機構が連携することで、団地の19号棟下の空き店舗を活用した取り組みが始まりました。地域には、十分活かされていない空間が少なからず存在します。近年、こうした空間としての「スペース/SPACE」を、人々の居場所である「プレイス/PLACE」に変えていく取り組みのプレイスメイキングが広がってきています。朝倉団地では、団地内商店街の空き店舗を活用したコミュニティプレイスづくりに取り組むことになりました。外国籍住民や子どもたち、通りすがりの住民等も関わり、見知らぬ人同士が楽しく語らい、協力し合う姿が見られた。椅子の組み立てだけではなく、思い思いの絵を座面に描くことで彩り豊かになり、ダイバーシティやインクルージョンを進める場所のコンセプトを体現しています。作業を通じて、「空き店舗」が、「私たちの場所」と認識されていきました。全てが設えられた空間を利用するのではなく、「剥き出しのコンクリートは殺風景なので漆喰塗りがいいのでは」、「座るための椅子や机はどんなのがいくつあるといいのか」、「掲示のための黒板が必要なのでは」等、この場所をより良くしていくための様々な意見交換がなされ、また、そのアイデアが採用され、作業プロセスに反映されていきました。 取り組みの積み重ねに合わせて、センタープレイスにおいてどのような取り組みをしていくのか、どのような運営が適しているのかというセンタープレイスの自律的なマネジメントに向けた組織化の検討が行われました。
実行事例

04

多様性を認め、
成熟した新たな「地域共生社会」へと進んでいく。

多様な主体が関わるということは、それぞれのやりたいことや進め方等自らの案を主張するだけではままならず、立場・役割を越えて、折衷案や代替案を検討し、新たな進め方を検討しなくてはなりません。朝倉団地の取り組みにおいても、時には、互いの意見や考え方の衝突や対立へとつながる等様々な葛藤も生じました。しかしながら、こうした想いや考え方が異なることから生じる衝突や対立を避けるのではなく、違いを前提に、対話や交流を丁寧に積み重ね、共感や尊重を育みながら、平等な関係性を構築し、また、互いを理解し合うことがなければ、互いの意識が変化し、それぞれが歩み寄り、合意形成を行っていくことはできません。葛藤や対立を地域の取り組みのエネルギーにしていくとともに、それ自体を楽しむ余裕こそ相互の学びのプロセスには重要です。とはいえ、従来とは異なる新たな進め方の受容には時間が必要になります。きめ細やかなフォローやサポートもしつつ、相互的なエンパワメントがなされていくことこそ、成熟した「地域共生社会」に必要であるといえるのではないでしょうか。
実行事例
Scroll Scroll
Nihon Fukushi University
SDGs Special Site